孤立した妊娠をなくし、親であってもなくても子どもはささえあって育てよう

2018年1月28日 23時38分 | カテゴリー: 人権・多様性, 介護・福祉・医療, 子育て支援・女性・男女平等参画, 活動報告

生まれきて幸せ――すべての子どもたちがそう感じられる社会にするために、何が必要か。政策提案のために考える「子どもの命を守る」連続講座が東京・生活者ネットワーク子ども部会の企画で開催されました。
1回目は昨年12月22日「思いがけない妊娠の現状」講師はにんしんSOS東京の中島かおりさん。2回目は「すべての赤ちゃんに家庭の愛を 特別養子縁組制定30周年、感慨深く~親なき赤ちゃんの抜本的な処遇改善を目指して~」、講師は元愛知県児童相談所児童福祉士の矢満田篤二さん。
いずれも、親だけでなく“社会で子どもを育てる”とは何かを具体的に考え、課題解決のための政策提案をする大きなヒントになる内容でした。

 

■妊娠がわかった瞬間から寄り添う人がいる、それが「ヒト」の子育て

妊娠の相談から支援まで―にんしんSOS東京

第1回目講師の中島かおりさん。

中島かおりさんは助産師で一般社団法人にんしんSOS東京の代表理事です。赤ちゃんの遺棄や虐待死――生まれたその日に起きるのが最も多く、加害者の9割が母親だそうです。誕生を誰にも喜ばれることなく死を迎えるというとても悲しい出来事の裏には、予期せぬ妊娠という事実があります。
妊娠中や出産後の行政による支援は、母子手帳の交付後に開始されますが、10代の妊娠や性暴力による妊娠、妊娠後に相手がいなくなるなどの状況の中、母子手帳の申請をためらう女性もいます。中島さんは、相談できる人が周囲になく誰にも言えないまま一人で出産するケースが数多くあるという現実を助産師の立場から見つめ、2015年に法人を設立。相談・支援・ピアカウンセリング・性教育などの活動を続けています。病院や弁護士、養子縁組支援団体やシェルターなどとも連携、もちろん行政の関係機関ともつながります。

小平市では健康課による妊娠SOS相談

にんしんSOS東京のパンフレット

出産後の子育てを一人で抱えなくても地域で助けてくれる資源がある、という情報さえも持たない女性をどうしたら救えるか。小平でも妊娠SOS相談が実施されていますが、中島さんの「小平はがんばってますよ」との言葉はうれしく思いました。というのも、生活者ネットとして熊本の慈恵病院のこうのとりのゆりかごを2010年に視察し、その後妊娠相談の開始を市に提案し実現したという経過があるからです。中島さんも慈恵病院の活動に大きく触発されたとのこと。
妊娠について相談できる場を増やすことと同時に、妊娠中健診や出産の費用軽減、性教育の充実、性暴力防止と被害者支援(こころとからだのケア、司法の整備等)、母子家庭への経済的支援の充実、などなどほかにも数多くの施策が求められます。子育てを親(特に母親)だけに押し付けるのではなく、社会・地域で親ごと家族ごと支え合うことこそが子どもの幸せにつながると再確認しました。

■生みの親と縁が薄い子どもを、育ての親とともに地域が愛する

妊娠中に里親を探す愛知方式

第2回講座の様子。

赤ちゃんの誕生前から特別養子縁組相談を受け、育てたい家庭につなげ新生児を託す。それを積極的に行っているのが愛知県の児童相談所です。いわゆる愛知方式と言われる赤ちゃん縁組の基礎をつくったのが2回目の講座の講師である矢満田さんです。
どうしても育てられない事情を抱えていたり虐待の可能性がある場合、生まれてくる赤ちゃんをどうするかを考えるにあたり、多くの都道府県の児童相談所では乳児院の情報だけしか伝えないことが多いそうです。

施設でも里親でも子育ては地域のささえあいで
 諸外国に比べ社会的養護が圧倒的に施設型に偏っている日本。生まれたときから自分の子どもとして育てる赤ちゃん縁組は、乳児院(2歳まで)から児童養護施設に移ったり、施設から里親に移るなどの大きな環境変化もなく、子どもにとっていい面が大きいと矢満田さんは言います。愛知方式の条件として、性別は選べない、障がいがあっても受け入れる、(子どもの様子を見ながら)将来的には事実を伝える、の3つがあります。そして里親の子育ても地域でささえあうことも重要で、愛知県では児童相談所が里親支援も行っています。
親子関係にとって重要なのは血縁だけではありません。親が子どもに対して責任を果たすのは当然ですが、それがどうしてもできない場合、あるいは虐待から子どもを守るため、代わりに子どもの育ちを守るのは社会のしごとです。東京都と連携し子育てをする各地域で里親をサポートすることを含め、施設でも里親でも子どもが健やかに育つための充分な予算の保障を望みます。