今、日本の子育てに必要なこと―フィンランドから学ぶ

2014年6月17日 01時28分 | カテゴリー: 子育て支援・女性・男女平等参画, 活動報告

お母さんに世界でいちばんやさしい国
 国の子育て支援策であるエンゼルプランが1994年に始まって以来、さまざま支援メニューが広がってきました。小平でもファミリー・サポートセンターの開設、子ども家庭支援センターの設置、保育園や地域センターでのひろば事業、そしてここ数年は待機児解消のための私立認可保育園の連続した新設など確実に事業は拡大し、成果もあげています。
 それでも、いまだに子育てをするお母さんの孤独感や閉塞感がなくならず、全国では悲惨な虐待事件も起きています。それはなぜでしょう。

世田谷区にある古い民家を開放した子育て広場「古民家mamas」

 さる6月8日、世田谷区にある“古民家mamas”で、フィンランドの子育て支援の話を聞く機会があり、ハッと気づいたことがありました。日本では「子育てに困る親に支援をする」という発想が根底にあるのに対して、フィンランドは「もともと子どもは親だけでなく社会で育てる」という発想なのです。

 子どもは社会のもの、だから子育ても社会で

可愛いイラストででサインされた蓋付きの箱

 その象徴が育児パッケージ。この日はフィンランド大使館広報部の堀口さんが、日本で初めて実物を公開してくれました。ベビーベッドにもなるというかわいい箱に、産着やおむつ、部屋着、外出着、シーツ、おくるみ、おもちゃまで生まれてすぐに必要になるものがすべて入っています。親の所得に関係なく、生まれてくる赤ちゃんはすべてもらえます。つまり、これは親に物をあげるというサービスではなく、すべての子どもが平等に生まれてくるための社会としての準備ということです。これが1920年代にはもうあったというから驚きです。

赤ちゃんのものだけでなく生理用パッドやコンドームなど、親のための物も入っている。

 フィンランドらしいのは女の子用・男の子用と色が分かれているのでなくみな同じものということ。さすが男女平等の国です。フィンランドは国際的な子どもの支援組織セイブ・ザ・チルドレンが毎年実施する「お母さんにやさしい国ランキング」で第1位。ちなみに日本は32位で経済的には肩を並べる先進7カ国中では最下位です。この指標には女性国会議員の割合も入っていて、男女共同参画と子育てが密接につながっていることも示しています。施策決定の場に男女がバランスよくいることが大事なのです。

 「できないお母さん」だからでなく、支援はすべての子どもたちのためにある
 人間は社会的な動物ですから、出産をしたその瞬間に子育てができるようになるわけではありません。周囲からの情報や支援があって子育てをするのは当然です。でも、「ちゃんとできない親だから助けが必要になる」という意識が、どうしてもみんなの中にもあるのではないでしょうか。それはお母さん自身にもきっと無意識にあって、世間ではもっと数多くそう思っている人がいるような気がします。

ちくま新書『虐待』とフィンランド大使館発行の男女平等についての冊子

 ちょうど、『虐待─大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書・杉山春著)を読んでいて、この若い母親が一人で子育てを抱えこまざるを得なくなった結果、幼い2人の尊い命が失われた経過を知ったばかりだったので、「子ども母親が育てるべき」という社会意識が「子どもに何が必要か」を見失わせている現状があると感じました。本当に悲しい事件でした。子育てにつまずいた親に対して、めざす目標は「自分だけでちゃんとできるようになること」ではなく、子どもの育ちを委ねる社会性を培ってもらうことであり、それは決して親を甘やかすというわけではないのだと思います。

 支援の拠点「ネウボラ」。世田谷では産後ケアセンター
 フィンランドではすべての子どもたちへの切れ目のない支援のために、妊娠期から誰でも利用できるネウボラという拠点があります。世田谷区では全国初として産後ケアセンターが誕生しました。子育てひろばである古民家mamasuを利用しているママたちも、産後ケアセンターを使うことで子育てが楽になったと言っていました。参加していた保坂・世田谷区長も後日、ネウボラや産後ケアセンターに関してこの日の集まりを紹介しています。  ⇒こちら

この日はフィンランド人の板根シルックさんやフィンランドの制度に詳しい高橋睦子さん、読売新聞編集局の榊原智子さんもゲストに

 親や親族だけでなく、社会全体で子どもが生まれてくることを「welcome」とする意識と制度を整えていくこと――子どもの幸せと「女性の活躍」を本気で考えるなら、フィンランドに学ぶことは大です。