原発のない社会をデザインする

2011年5月17日 11時56分 | カテゴリー: 環境・まちづくり・行政

 先週13日金曜日、NPO法人コミュニティ・スクールまちデザインの緊急セミナー「原発問題とエネルギーの未来」に参加しました。脱原発と言ったときに、「じゃあ、明日からの電力不足はどうするの?」「関連産業でたくさんのひとの雇用が失われるよ」「経済活動が停滞して日本が大変なことになっちゃう」——返ってくる問いかけにどう答えるか、原発がない社会に向けての道筋をイメージするための勇気を得たセミナーでした。印象に残った話を中心に感想をまとめました。
 
●脱原発をどう実現するか——ドイツの方法に学ぶ
 1講目は「原発のない日本をつくるために」。講師は真下俊樹さん。脱原発政策=すべての原発を一斉に同時に止めることではないだろうとは思ってはいたけれど、ドイツの脱原発法の焦点は「原発の寿命を何年にするか?」ということ。ドイツでは80年代からの激しい反対運動で新規立地が困難となり、シュレーダー政権時にコンセンサス協議で耐用年数を平均32年にすることで合意。メルケル政権では耐用年数を延長することが画策されていたが福島の事故で頓挫した。耐用年数がきたものから順次廃炉にしていき、風力など再生可能エネルギーへの転換を促進していくという原発の「段階的廃止」の考え方を知ることができた。
 日本の原発は54基。当初は原発の寿命は30年程とされていたが、現時点で年齢が30歳以上のものは17もある。今後、福島の事故処理に数十年かかることが予想され、コスト的にも新しい原発をつくることは困難となるなか、既存原発の寿命を延長されないようにすることが大きなポイント。それは新しい原発をつくることと同じになるからだ。
 ドイツで脱原発法の大きな原動力になったのは反対運動。真下さんの話を聞いて、日本では福島の事故による被害と不安をターニングポイントに、事故処理と併せてエネルギー政策の転換を図ることで失望を希望に変えたいと思った。16日に報道された共同通信社の世論調査では、今後、原発を「減らすべきだ」47%、「直ちに廃止」6%で計53%、「現状維持」の38.5%を上回った。思いは表現しないと伝わらない。行動と発言を形にしていかなければとあらためて感じた。

●「じゃんじゃん電気をつくる」から「つくれる電気でやっていく」の発想転換を
 2講目は田中優さん「原発の今、放射能の影響、私たちの未来」。電力会社のコストには投資の一定割合を利益に計上できるという’総括原価方式”が採用されていることは真下さんも触れていた。それはつまり、ピーク需要に合わせてどんどん発電所をつくれば電力会社の利益も増えていくということ。
 田中さんは、電気についてはこれまでのサプライサイド・マネジメント(=需要(デマンド)に合わせてどんどん供給(サプライ)していく)ではなく、デマンドサイド・マネジメント(=供給(発電所)に合わせて需要を下げていく)に変えていくべきという。その道筋としては、まず節電。それも個人の努力を求めるのでなく、ものぐさでも省エネできる方法、たとえば電球をLEDに替える、冷蔵庫やエアコンを省エネタイプに替える、そして実は家庭よりもずっと大きい産業界の電力使用量を料金体系を変えることで省エネ投資を増やすように導くなど、電力使用量をまず減らしていく。
 これは実はコスト的にも社会的メリットが大きいのだと思った。これまで「原子力は安い」と言われてきたが、実は原子力よりも太陽光など再生可能エネルギーのコストは技術開発と普及により下がっており2010年には逆転しているとのこと。今後福島の事故を受け耐震や津波対策への設置基準が高まりコストは上がっていくことは間違いない。新しい発電所をつくるよりも省エネに費用をかけるほうがコストは安く済む。電力供給の調整をするスマートグリッドの導入も効果が期待できる。
 真下さんの話ともつなぎ合わせると、耐用年数を決め順次廃炉にしながら、再生可能エネルギーを少しずつ増やしていくことで脱原発も不可能ではないと道筋が見えてくる。それは長い時間がかかるが、いま決断しなければ永遠に抜け出せない。事故処理ではない計画的な廃炉であれば、人命に関わるような作業環境で働くこともない。時間をかけて政策として新しい雇用を生むことも可能だろう。再生可能エネルギーの産業では、原子力最優先では日の目を見なかった研究や中小企業にも新しいビジネスチャンスが生まれる。
 「原発がないとどうなるか」をスタートにするのではなく、「原発をやめていくにはどうしたらいいか」、未来に向かって社会のデザインを変えるための情報共有をみんなでしていくことで希望が湧いてくる。
(第3講:有路昌彦さん「海の資源の影響と風評被害を考える」はツイッターでつぶやきましたので、ここでは省略)