希望を捨てずに——政治をあきらめない!!

2010年10月24日 21時08分 | カテゴリー: 活動報告

 小平・生活者ネットワークができてから今年でまる19年経ち、20年目の年に入りました。23日には19周年記念の講演&政策発表会を開催しました。講師は政治学者の山口二郎さん(北海道大学大学院教授)。「いま問われる社会・政治・市民〜政治を変えるのはわたしたち」と題して、わたしたち市民自身が何をどう考え行動すればよいかを話していただきました。
 私の感想をまじえて概要をご報告します。

●政治を見るには長い時間の幅が必要
 昨年の夏の政権交代への期待は大きかったが、いま大きく世の中が変わらないことに幻滅している人も多いはず。生活者ネットワークも政権交代をめざしての応援体制を組んだ当事者であり、山口さんと同じように私自身もがっかり感を抱くと同時に、このまま政治へのあきらめや不信感が強くなればもっと事態は悪くなってしまうのではないかという危機感をもっています。
 しかし、たった1回の政権交代で世の中がすっかりよくなると考えることが甘いのであって、政治はもっと長いスパン、時間の幅で見ると変わったことが見えてくると山口さんは言います。これまで長い間、自民党中心の政権にあって政治は会員制のクラブであった。つまり政策形成の過程に政・官・財の特定の会員しか入れず、それ以外の普通の市民(働く女性や若者、雇用システムからこぼれた人などなど)は門前払い。それが少なくともこの固く閉ざされた会員制クラブのドアが少しは開いたと言える。確かに生活保護の母子加算の復活や貧困率の発表と対策実施など、これまで(特に小泉改革時代には)私的領域における自己責任の問題に置き換えられて政策化されなかった、あるいは政策から削られてきた問題に日が当たりました。
 すぐには変わらなくとも徐々に市民社会の水位が上がっていくことが実は大事なのであって、1〜2年の時間の幅でジェットコースターのようなことをしていると幻滅ばかりになっていやになってしまう、という言葉はとても説得力をもって響きました。たしかに、20年前から生活者ネットワークが言い続けた市民参加や市民自治は、当時は行政側も聞く耳さえもたなかったようですが、いまは制度化・条例化されました。これもいまは運用や活用が充分でないため期待の裏返しで幻滅の声も聞こえますが、実態を手に入れるために粘り強く本来の目的を市民として(もちろん市民の代弁者である議員としても)訴え続けていくしかないのだと思っています。

●政策に必要なものはゴールとすべき社会の姿
 山口氏は政権交代を後押しした立場として、現政権民主党政府に非常に辛口のコメントをしました。民主党のマニフェストはmanifesto(政治的宣言)ではなく、manifest(積荷目録)である。いろいろなものがいっぱい詰まっているカタログのようなもので、この一つひとつがあるととても便利だけれど、さてこのカタログのものが全部そろうとどんな生活になるのかが見えてこない。そこにめざすべきゴールとなる理念や思想があるかが政治には重要なのだと言います。
 私も理想を語らずして政治へのスタートはないと思います。ややもすると政治の話は批判のみに終始しがちですが、それだけでは何も生まれないしなんだかとても疲れるのです。
 この日は講演会と併せて小平・生活者ネットワークの政策発表もありましたが、山口さんからは「調和して連帯する排除しない住みやすいまちをつくろう」という思いが伝わってくると、あたたかいコメントをいただきました。(小平・生活者ネットワークの2011年政策はこちら⇒)ネットの政策は個別の地域課題という形でなく(それはもちろんそのときどきに行動していきます)、まさにめざすべきまちや社会の姿を実現するためのものなので、とても嬉しい言葉でした。

●まず現状を正しく知ろう!
 菅政権になってから法人税の減税が打ち出されました。日本の法人税が高いというのは本当でしょうか? 山口さんはデータを示しながら、日本の法人所得課税は諸外国に比べて特に飛びぬけて高いことはない。日本より見かけ上法人税が安いドイツやフランスでは社会保険料の雇用主負担分が大きいなど税だけでは見えてこないものもある。法人税を安くしないと企業が海外に流出してしまうということも信憑性を疑うとのこと。また、大きな政府・小さな政府という対立軸にはあまり意味がないとも言っていました。大きな政府=高福祉国家であるスウェーデンと小さな政府=自己責任型のアメリカを比べると、税負担は確かにスウェーデンのほうが3倍半ですが、医療や教育、介護、保育など義務的経費の持ち出し分を合わせるとスウェーデンが41.2、アメリカが39.6と大きな違いはないのです。これはもう誰もが安心して暮らせる社会かお金のある人だけが安心できる社会かという思想の問題。社会のモデルはこの二者択一ではないと思っていますが、日本がどのような社会をめざすかは、現状を正しく知ってわたしたち市民が自ら考え選択していかなければならないし、今がまさにその時期なのだと思います。

●いまこそ地域、市民政治の出番
 こうした期待の後の幻滅の時期に、強い指導者を待ち望む雰囲気が強まっているのがイヤだなあと考えています。長いスパンで見ると、排除される人が増え生きにくい、声の出しにくい世の中になりそうな気がするからです。山口さんも、いまの強い首長=大阪府や名古屋市(まあ東京都は前からですが、とこれはわたしの感想)のようなワンマンなリーダーが一方的に改革を進めようとすることへの危惧を唱えていました。いっぽうで二元代表制の一翼である地方議会の役割が問われており、地域のなかで市民が政治にどう関わるかがいま大きく問われているとしました。地方は日本の民主政治の基礎体力を測る場であり草の根レベルの政治がしっかりしないと、国政も根なし草になっていくという山口さんの言葉は、言い換えると政治を変えるのは地域の政治=市民の理想ということです。
 一朝一夕に世の中は変わらない、でも確実に変わっているものもある——覚悟と希望をもって頑張っていこうと思いました。