介護・福祉はまず声を聞くことから

2007年4月9日 09時26分 | カテゴリー: 介護・福祉・医療

 ——デイケアのない日は外出もままならないばかりか、自分の食事さえおろそかになってしまう……認知症のご家族を介護する方がおっしゃっていました。大切な家族のこととはいえ、当事者にとって現実はとても大変です。
 高齢者の幸せを家族だけではなく、地域全体でささえるという介護保険の発想は画期的です。「介護保険があって本当に助かっている」という声もたくさん聞きました。でも、昨年4月の改正によりまた家族頼みの方向に逆戻りしているという印象をぬぐえません。
 現場で家族を支えているのはケアを行う介護事業者ですが、利用者のお声を聞くと、当事者の思いをくむNPOや福祉法人など地域に根ざした事業者の努力を強く感じます。

 5年ほど前、社会福祉法人の団体である全国社会福祉協議会が発行する冊子の連載の仕事をしていました。創設50年以上の社会福祉法人を取材し、その歴史を訪ね創始者の精神を現在に重ね合わせ、福祉の原点に立ち返ろうというコンセプトで作られた連載ページでした。
 その仕事を通じて知ったことは、福祉事業はいつの時代も助けを必要としている人を目の前にして「何ができるか」と具体的に考えた人たちの力強いモチベーションによって生み出された、ということでした。
 親のない子や障がいのある人などを目の前に手を差し伸べた事業が、戦後の福祉制度の確立に伴い法人化していったのが古くからの社会福祉法人です。その精神は、いまあらたに地域で「利益を目的とせず」事業を開始するNPOの姿に重なってくるように私には見えます。

 たまたま小平市の西部にある社会福祉法人を取材する機会がありました。その法人は敗戦直後の上野駅周辺にテント村を作り救護活動を行ったのが創設の由来で、取材当時は、小平市内で知的障がい者施設や特別養護老人ホームなど10以上の施設を運営していました。
 なかでも、特別養護老人ホームの特別介護棟は全国で初めての認知症介護棟として注目を集めていました。そのときはまだ「痴呆症」と呼ばれていた認知症の独特の症状に対処するため、回廊の設置、丹念な声かけの実施、各所へのトイレ設置と細かな排泄処理など、施設面ケア面ともに配慮しているということでした。その結果、徘徊への対応もでき、症状の緩和や行動の落ち着きなど目に見えた成果があったようです。
 2002年のこのとき、先駆的な取り組みとして重度障がい者グループホームへの取り組みを始めたところでしたが、大型施設ではなく地域のなかで暮らすというこの動きは、高齢者対象も含めていま各地で広がりを見せています。

 先日お会いした方は、認知症の親ごさんをグループホームに預けたところ、普通のおうちのような環境と人間関係が良かったのか、症状が改善されその後自宅に戻りご家族と一緒に暮らせるまでに回復したそうです。ご本人もそのホームのことを覚えており、「あそこはよかった」と今もお話なさっているとのことでした。
 人や家族の個性や暮らしのありようはそれぞれに違います。「高齢者」「障がい者」とひと括りにするのではなく、「自分らしく」暮らせるサポートをニーズに応じて取り揃える。これは施設をたくさんつくることとは必ずしも限りません。
 
 生活者ネットワークは、20数年前の設立時から市民と行政の協働を理想としてきました。介護や福祉サービスについても、当事者、事業者、双方の声を聞き、一方的な要求にならない形で地域で調整してきたことで信頼を得ています。
 私も仕事で培った取材力と「聞く耳」を、生活者ネットワークの活動で活かしていければと思っています。